「MAKAMI」の描く世界

みなさまはジブリ映画の『もののけ姫』を観たことはありますか?

そこに描かれる人間と自然との対立や、立場の異なる人同士の対立は、アニメ映画でありながらもとてもリアルで複雑です。そしてそれはそのままジビエにまつわる現実問題と重なるものがあります。

さらに『もののけ姫』に出てくる森の神様や生き物たちはとても神秘的で、時に荒々しく力強い存在として描かれています。私が作品に込める想いはそんな自然の厳しさや畏れを含む、生命の美しさそのものです。

「MAKAMI(まかみ)」が扱うのは、農作物に甚大な被害を与え、人間たちから「害獣」とされてしまった獣たちの尊い命です。

大きなことはできないけれど、日常の中でほんの少し、厳しくも美しい自然の景色を「MAKAMI」を通して多くの人に感じてもらいたいと思います。

野生鳥獣による農作物被害に嘆く人々

私たちの日常の裏で農家の方々は野生鳥獣と闘っていました。

私にとって肉や野菜はスーパーに行けば簡単に手に入るもので、せいぜい「農業は休みもないし天候に左右されて大変だ」という認識でしかありませんでした。

近年では都市部にも鹿や猪が出没しニュースとなり、人間との生活に様々なトラブルが生じています。特に農作物への被害は甚大で、昨年度(2019年度)の農作物被害は158億円。その多くは鹿や猪が田畑を踏み荒らし、稲や果物を食べつくしてしまうことが原因です。

中でも、猪にキャベツ畑を全て掘り起こされ廃業に追い込まれてしまった農家のおじいさんの話は私に強い衝撃を与えました。スーパーで野菜が高いと考えていた世界の裏にはそんな現実があったのです。


獣を狩る人たち

少しでも被害を抑えるために、国やあらゆる団体が様々な対策をとっています。

人々の生活の根幹を脅かす彼らは「害獣」とされ、年間約100万頭の野生鳥獣が「個体調整」のため捕獲・駆除されています。

「個体調整」は鹿や猪を捕獲し、個体数を減らす取り組みで、冬季の狩猟期以外に、夏季も含めた有害鳥獣駆除を国や地方自治体の助成を受けて地元の猟友会が行っています。

もちろん、安易に数を減らそうというだけでなく、野生鳥獣の集落への出没を防ぐ目的で、畑の野菜くずや柿など果実の撤去などを行ったり、人との生活区域を分けるために柵を設置したり、様々な取り組みがなされています。

利活用としては、近年ジビエ肉が普及するようになってきましたが、そのまま山に放置される命も多いのです。

害獣駆除された命に新しい息吹を

『殺生』とは、殺して生かすこと。

ジビエレザーブランド「MAKAMI」は、害獣駆除された命に新たな息吹を吹き込み、生かす製品作りを目指しています。 

私が思い描く「MAKAMI」の世界で、ジビエの魅力と、そこから感じる自然や命の美しさを作品を通して少しでもお伝えできれば幸いです。


ジビエレザーについて

「MAKAMI」の作品の素材・製造は、すべて日本国内。

地域によってその生息分布は様々ですが、今回原皮の産地となっている<鳥取県の若桜町>では、その大半は鹿が占めています。捕獲された鹿の皮は、「革どころ」である兵庫県たつの市の害獣専門のタンナー(なめし工場)「タツノラボ」で丁寧になめされていきます。

なめしの工程では有害な化学物質を使用しない皮革製造システムで、環境への負荷を極限まで抑えています。

ジビエレザーは野山を駆け回っていた野生動物の皮なので、作品の中に革傷も多く入ります。生前に負った傷もあれば、狩猟の際の弾痕、捕獲の際の傷、猟師が皮を剥ぐ際についたスエード面のナイフ痕などもあります。そこに彼らの生きた証を感じ、「MAKAMI」の魅力を引き立てます。